めだかたちは、水槽の中で生きている。
ガラスに囲まれた小さな世界。
それが、彼らのすべて。
毎朝、空からごはんが降ってくる。
それが「朝」の合図。
でも、ときどき忘れられることもある。
そんな日は、みんなで「神様」の話をする。
水が突然ゆれる日がある。
それは、地震のような日。
実は、人間が気まぐれに水槽を少し動かしただけなのに、
めだかにはその理由がわからない。
そこには、“きぶん”という風が吹いていて、
その風がいつか、自分たちをすくい上げるかもしれない
水が急に減る日もある。
生命の危機。
でもそれも、ただの水換え。
人間にとっては「お世話」のつもり。
けれど、めだかにとっては天変地異
めだかたちは知らない。
その世界を支えているのが、
自分たちの目に見えない“存在”だということを。
人間の気まぐれで、すくい上げられることがある。
そこに広い池があるかもしれないし、
流されて死んでしまうかもしれない。
それもすべて、人間の「きぶん」しだい。
けれど、人間は決して悪意を持っていない。
毎日、彼らが気持ちよく生きられるように、
えさをまき、水をかえ、
時には鳥のエサを間違えて入れてしまう、そんなドジもある。
まれに、どうしても飼えなくなった人間が、
めだかを川に放してしまうこともある。
そのとき、たくさんの命が失われることがある。
けれど、それもまた、
めだかにとっては理解できない“天変地異”。
それはまるで、人間にとっての大地震や災害と似ている。
もしかすると――
神様もまた、よかれと思って揺らしている
理由があるのかもしれない。
人間には神様の姿が見えない。
でも、見えないからといって、いないとは限らない。
見ようとする気持ちがあれば、
想いが届くと信じれば、
ふと、その存在に気づける日が来るのかもしれない。
今日も、水はゆれている。
空からごはんが降ってきて、
仲間たちが泳ぎ、
小さな世界は静かに続いていく。